豊田工業大学 研究センタースマート光・物質研究センター
2016年度設立 センター長:大石 泰丈
【マイクロメカトロニクス研究室】光MEMSと計測技術の研究開発
教授 佐々木 実、准教授 孔 德卿
主な研究内容・成果
①光素子むけ立体加工技術と応用
フォトリソグラフィ技術は、平面基板にのみ有効である。対して、光素子ではレンズに代表される曲面や凹凸高低差を利用することが多い。これらの立体サンプルにも、並列で同時に加工を進めることができる長所を生かしつつ、微細加工を可能にする。
(a)直径25mmのシリコンレンズ面に形成したピッチ4μmの格子である。シリコンはエッチング加工まで施した。曲面の高低差は220μmあるにもかかわらず、全面にパターン転写できた。ピッチの細かいパターンは、回折広がりが強い。レンズ面に平面のフォトマスクを近接させる旧方式では、必然的に生じる220μmのギャップでパターンが崩れる。そこで、シート状に感光性のレジスト膜を用意し、密着露光で微細パターンの潜像までを用意してから、フィルムを貼り付ける新方式を見出した。レンズ用の金型など、精密機械部品にも同種の加工ができる。技術を更に高めて応用を進める。
(b)垂直壁をもつ溝に、上面から垂直壁をつなげる微細パターンである。幅25μmのパターンも用意できた。光通信モジュールでは、ファイバからの光信号を受けるフォトダイオードを基板に縦置きするが、配線をワイヤボンダのために基板上面に接続するモジュール応用である。
(図a)
(図b)
②光MEMSデバイス(光源、センサ、アクチュエータ)
これまでに製作した光応用MEMSデバイスの例を次に示す。
(a)マイクロヒータ駆動時の熱画像である。中心部は穴であり、下に配置した金格子からの、表面プラズモンを介した赤外線出射を捉えている。マイクロヒータの構造が、熱エネルギーの散逸を最小限に留め、CO2ガスを計測できる波長4.3μm帯の赤外線出射に選択的に使われる。黒体輻射に対して約2倍の出射強度を実現した。改良を進めている。
(b)静電駆動ねじり振動子を利用した、非冷却動作する赤外線センサである。静的な熱たわみが、厚さ270nmの薄膜ねじりばね剛性を硬くする原理である。材料が持つ剛性の温度依存性を利用するよりも10倍以上の大きな変化を示し、高感度な赤外線センサに応用できる。
(c)Si構造によって、光ファイバ固定溝と、ミドリムシ細胞を光軸上にトラップするマイクロ流路機能を一体にした。光ファイバは外部圧電素子により駆動し、水圧パルスを細胞に印加し、光散乱信号によって細胞の硬さ情報を非侵襲計測するデバイスである。
(図a)
(図b)
(図c)